5月度チリ情勢

在チリ日本大使館より発行された「チリ経済情勢報告(2023年5月)」、「チリ政治情勢報告(5月)」によると、直近の情勢は以下の通り要約される。:

  • 政治情勢 

チリ財務省、鉱業省によると、鉱業ロイヤリティ法修正案(2024年から施行)が議会で承認された。

同法案の内容は以下の通りとなる:
年間5万トン以上の銅を生産する鉱山会社に対して、銅の年間売上高に対して1%の従価税と、営業利益率に応じて8%から26%の税率で利益に課税される。
税負担の上限は、生産量に応じて45. 5%から46. 5%に設定される。
また、徴税額の一部(3分の1)は各地域及び自治体に資金提供分として還元され、残りは警察及び司法行政システムの向上、研究開発への投資等に充てられる方針にあるようだ。
※鉱業ロイヤリティ法についてこちらも是非ご覧ください。

また、COVID感染状況についてWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を解除した事から、チリ保健省は今年5月よりチリ入国時におけるPCR検査、ワクチン接種証明書の提出及びランダム検査を終了する事とした。

  • 経済情勢

4月の経済活動指数は前年同月比-1.1%、鉱業においては前年同月比3.1%を記録した。
同月の鉱業生産指数は前年同月比2.5%となり、銅生産量においては前年同月と比べ1.1%の下落がみられた。
5月の輸出額は78.4億ドル(前年同月比-10.8%)、その内鉱業品43.9億ドル(同-12.9%、全体の56.0%)、さらにその内の銅は34.6億ドル(同6.9%、鉱業品輸出額全体の78.8%)となった。一方5月の輸入額は68.8億ドル(前年同月比-18.9%)となり、貿易収支は9.5億ドルの黒字となった。

なお、4月度の対日、中、韓貿易額は以下の通りだ:
対日:輸出額7.0億ドル( 前年同月比22.4% )、輸入額1.3億ドル( 同-38.8% )、貿易総額8.3億ドル( 同-5.9% )
対中:輸出額27.7億ドル( 前年同月比-11.6% ) 、輸入額15.3億ドル( 同-7.8% ) 、貿易総額42.5億ドル( 同-10.3% )
対韓:輸出額5.6億ドル( 前年同月比24.2% )、 輸入額1.1億ドル( 同-30.2% ) 、貿易総額6.6億ドル( 同10.5% )

また、COCHILCO(チリ銅委員会)が2035年までのリチウム市場予測結果を発表した。同予測によると、まずEV用バッテリーの消費量増加が予測される事から、炭酸リチウム換算の世界需要が2021年の50.8万トンから、2035年には382.8万トンに増加すると予測されている(年平均成長率15.5%)。
炭酸リチウム生産量については、新規プロジェクトの具体化から平均して年間12.6%伸びると見られている。
一方、既存事業の供給状況や新規または拡張事業の立ち上げの遅れによっては一時的な供給不足、各種リチウムの価格上昇、企業の赤字拡大が予想されるそうだ。

参考:在チリ日本大使館「チリ経済情勢報告(2023年5月)」
在チリ日本大使館「チリ政治情勢報告(5月)」